親子関係。
それは、親にも子供にも長く強烈な影響を与え続ける関係です。
親は子に、子は親に影響を与え、それぞれの人格が決まったり、変わったりしてしまうほどの迫力があります。
親子関係が深刻な状況になると、お互いに心も身体も不調になり、社会生活が立ちいかなくなってしまうこともあるでしょう。
今回は、積極的傾聴の神様、カール・ロジャーズの思想をベースにした、「親子関係を改善するための5つの積極的傾聴マインド」を紹介します。
親子関係を改善したがっている人は読んでみてください。
親子関係改善積極的傾聴マインド①

相手を自分とは違う現実の世界を生きている独りの人間として捉える
親と子は、まさに一心同体。
親は子のことがなんでもわかるし、子は親のことがなんでもわかってしまう。
そのような感覚を持ったことは、誰しも少しくらいはあるのではないでしょうか。
もしくは、全く逆で、私は子供の気持ちが全くわからない、私は親の気持ちが全く分からない。
うちの親子は絶対おかしい、と嘆いている人もいるかもしれません。
しかし、実は、健全な親子関係に必要な積極的傾聴マインドの1つは、相手を自分とは全く違う現実の世界を生きている独りの人間として捉えるということなのです。
この捉え方は、人間関係理解の1つの真理を表しているのですが、親子関係など、身近でお互いの影響力が強い関係であればあるほど、了解するのが難しい考え方になっています。
人間関係の混乱、そして破綻の原因は、相手を自分とは違う現実の世界を生きている人間だと思えなくなり、自分は相手を理解できていると思い込んでしまうことから始まります。
また逆に、相手は自分のことを理解することができる存在であると思い込んでしまうことも、苦しい関係の始まりです。
どんなに近しい人間であっても、血のつながりがあり、それこそ、一時期は完全な一心同体であった相手だったとしても、それぞれが別の現実世界を生きている別人である、と骨身に沁みるように理解することができるかどうか。
その上で、いつも相手を理解しようとする努力を怠らないこと、相手の変化を受け入れていくことが健全な親子関係には必要になります。
このあたりは、寂しい、冷たい、受け入れがたいと感じる人も多いかもしれません。
しかし、それがロジャーズの言う、人間関係の真実であり、血の涙を流しながら、克服しなくてはならないところなのです。
親子関係改善積極的傾聴マインド②

相手の言葉には相手の生命が宿っていると考える
これは、親子関係以外のところでも言えるのですが、人間の発する言葉(声や文字)には、その人間の生命が宿っています。
もし本気で自分の努力で親子関係を改善したいと考えている人は、是非、相手の言葉のすがたを大事にしてみてあげてください。
人間は、自分の言葉を聞いてほしくて聞いてほしくて仕方がないのです。
もし、自分にとって一番身近な人が、自分の言葉をそのままに聞いてくれたら、これほど幸福なことはありません。
それまでの関係がガラッと変わってしまうほどの衝動的な嬉しさだって生まれることがあります。
ただ、相手の言葉のすがたをそのままに聞き、そのままに受け止めることは、自分の言葉をとりあえず置いておく必要がありますから、なかなか難しいです。
ですが、相手を本当に大事にしたいという気持ちがあれば、相手の言葉のすがたを一生懸命大事に受け止めることは可能です。
まずは、相手が声にした言葉のすがたをそのまま自分の声にしてみるところから始めてみてください。
驚くような、相手の反応が見られるかもしれませんよ。
親子関係改善積極的傾聴マインド③

相手の人生は代わってあげられない
親がどんなに子を大切に思っていても、子が親をどんなに大切に思っていても、それぞれの人生を代わってあげることはできません。
相手がどんなに辛そうで、どんなに悲しそうで、どんなにかわいそうでも、決して代わってあげることはできない。
どんなに、どんなに大事に思っていてもです。
相手の人生は、相手に任せるしかありません。
相手のためを思って、いろいろと口を出したり、やってあげたいのはやまやまでしょう。
しかし、自分の人生の責任を取ることができるのは自分だけです。
親や子の、子が親の人生の責任をとってあげることはできない。
それぞれの人生は、それぞれに任せるしかないのです。
そこにどっかりと座ることができると、相手の人生をそのままに尊重できるようになります。
親子関係改善積極的傾聴マインド④

相手は思い通りに変えられないということを思い出す
小さな頃からずっと一緒にいるんだ
他の人とは違う特別な関係なんだ
私がずっとずっと育ててきた
この人にずっと育てられてきた
だから、私なら、この相手を思い通りに変えられる。
無意識にそう思ってしまうのは、ごくごく自然なことかもしれません。
親子関係の唯一性、特別性には相当のエネルギーがあります。
しかし、そのエネルギーをもってしても、相手を自分の思い通りに変えることはできない。
おそらく、これまで、私たちは相手を思い通りに変えられたことは一度もないのです。
それなのに、何度も何度も相手を思い通りに変えられないことに腹をたて、憎しみの感情をもってしまいます。
あらためて、相手は自分の思い通りに変えることはできないことを思い出しつづけることは、本当に大事なことと思います。
私たちは、すぐに忘れてしまうのです。
そして、また自覚なく相手を思い通りに変えようとして、それが上手くいかないことに腹を立ててしまうのです。
何度でも、何度でも思い出しましょう。
私たちは相手を思い通りに変えられたことなど一度もない。
それが思い出せているうちは、相手の言動を理解しようと努めることができるでしょう。
親子関係改善積極的傾聴マインド⑤

健康な親子関係ほど、いつでも離れられる
人によっては、寂しく感じ、人によってはありがたく感じるかもれませんが、健全な親子関係ほど、お互いを信頼し、いつでも離れていくことができます。
子供はいつでも家を出ることができるし、いつでも帰ってくることができる。
親は、いつでも子供を送り出すことができるし、迎えることができる。
お互いが、依存しすぎず、自分の為に相手を縛ることを必要としない関係。
とても自由で清々しい関係こそ健全な親子関係だと思います。
親も子も、その他の人と親密で信頼ある関係を自由につくることもできます。
お互いがお互いのことを心配している時間がとても少なく、自分の人生に集中できています。
しかし、どちらかが助けを求めたときには、スッと助けてあげられる。
助けを求めることも、助けることも、お互いにとって何の抵抗もないからです。
このように依存を克服し、別れを受容できる関係こそ、真に健全な関係であると言えるでしょう。
親子関係を改善するための5つの積極的傾聴マインド、おわりに

「親子関係を改善するための5つの積極的傾聴マインド」ということで書いてきました。
親子関係において大事なことは、まるで自分のことのように身近な人を、どれだけ、世界の違う別人であると尊重できるかどうかにかかっています。
親と子の関係である前に、人間同士です。
しかし、実際親子が対等の人間関係を構築することはなかなか難しい。
親は子に、子の役割を求める必要がなくなって、子は親に親の役割を求める必要がなくなって初めて、やっとお互いをひとりの人間として尊重できるようになるのかもしれませんね。
個人的には、子の方から親から離れてあげることが、親子関係を健全にする近道のように感じています。
子の皆様、どうぞ、親から離れてあげるために、健やかに、すくすくと育ってくださいませ。
黒田明彦