ずっとずっと聞こえていた私の願い、唄うよ。
聞かせてよ

「聞いてほしい」
その言葉が世界に溢れてほしい。
私には見える。
世界は聞いてほしい人たちで溢れている。
だけど、聞こえてこない。
「聞いてほしい」
「ねぇ、聞いて」
「お願い、私を聞いて」
そんな言葉は聞こえてこない。
聞かせてほしい。
あなたの「聞いてほしい」を聞かせてほしい。
私は聞かせてほしいんだ。
それはあなたの言葉なんだよ

自分の気持ち、感情、我儘、くだらないこと、どうでもいいこと、甘え、悪口、いじけ虫、嫉妬、憎悪、だらしない、情けない、隠したい、我慢できない、はじけそう、爆発しそう・・・。
言っても意味のないこと。
言ったら迷惑になること。
言えるわけない。
言ってもしょうがない。
だけど、ずっとあなたのところにやってきている言葉。
ずっと、あなたのもとに、やってきてやってきて仕方がない言葉。
そのまま。
そのまま。
それってね、どこかで声になりたがっている言葉なんだよ。
ただ、あなたが、あなたになるために、あなたに向かってやってきている。
それらの言葉があなたの声にならないと、その次に待っている、あなたの願いは、あなた自身に聞こえてこないんだ。
あなたがあなたになるために。
「聞いてほしい。」
「ねぇ、聞いて。」
この言葉は必要なんだ。
消えていく思い、硬くなる身体

花が咲いていた。
猫が笑っていた。
私は今日も生かされていた。
「あのね・・・ううん、なんでもない。」
意味はないから。
ただ、私のことだから。
あなたには関係ないことだから。
言葉にならなかった。
発見。
高鳴り。
声にならなかった。
別にいいんだ。
すぐに忘れるよ。
寂しくなる。
身体が強張る。
だけど、忘れていける。
なかったことにしていける。
私がシュンっとなっていく。
「ねぇ、聞いて。」
ただ、この言葉、言えるかなぁ。
聞いてほしいなんて言葉はいらない?嫌だ

忘れてしまえばいいこと。
我慢すればいいこと。
見て見ぬフリをすれば、なかったことにできる。
感情。
気持ち。
本当。
今日が始まって、ただ今日が終わる。
それで十分なんだ。
「聞いてほしい」
聞かせてほしい。
「聞いてほしい」
聞いてもらう喜びを思い出せますか?

あなたは聞いてもらったことはありますか?
なんてことはないことを、ただ、ただ、聞いてもらったことが。
意味も必要なく、ただ、自分の言葉を自分の気持ちを自分の生命をそのままに受け止めてもらう。
ただ言えて、ただ聞いてもらえて。
それだけ。
それだけなのに、心はギュッとなり、次の言葉がどこからか運ばれてくる。
不思議なんだ。
エネルギーが湧くんだ。
意味もなく、ただ聞いてもらっただけなのに。
何の解決もない。
何の知識も増えていない。
ただ、気持ちが、感情が、生命が、弾けて、彩って、収まっていく感じ。
ギュッとなるんだ。
聞いてもらうって。
知っているはずなんだよ。
皆、どこかで。
きっと一度は聞いてもらっているはずなんだ。
だから、知っている。
ただ、聞いてもらえる感覚を。
たった独りのあなたよ、私の唄を忘れないで

私は、あなたの言葉を聞くためにここにいる。
私は、ただ、たった独りのあなたの言葉を聞くためにここにいる。
意味など必要ない。
はからいなど必要ない。
ただ、
ただ、
「私を聞いてほしい」
あなたのその言葉を私は、待っている。
あなたの声を、あなたの言葉をただ聞かせてほしい。
「聞いてほしい」
「ねぇ、聞いて。」
「私はね、・・・」
「聞いて、聞いて。」
そんな、あなたの言葉、もう聞こえてきているよ。
黒田明彦