光のいのり

精神保健福祉

精神障害者の就労継続に大切な2つのこと(元支援者目線)

精神障害_就労継続

今回は、精神保健福祉士として、精神障害者の就労支援を生業としていた私が、精神障害者の就労について、大切だと感じていたことを紹介してみたいと思います。

この記事では、統合失調症などの精神障害を抱えているが、なんとか就労ができるところまで安定して、福祉の就労支援をガッツリ受けた上で、障害者就労していく人のための考え方を紹介します。

軽度うつ病の人など、福祉サービスの就労支援を利用しなくてもなんとかやっていける人には、あまり当てはまらないかもしれませんのでご了承ください。

精神障害者の就労は、他障害に比べて難しい?

精神障害者は就労が難しいのか?

精神障害者の就労は、他の障害と比べても、なかなか難しいところがあります。

障害者就労支援における就労とは、就職活動の成功だけを意味するのではなく、その後の就労継続を意味します

精神障害者は、就労のための能力や、1つ1つの仕事に対する能力はある程度高くても、就労を継続する能力が他の障害と比べて、高いとは言えないのです。

精神障害者が就労継続が難しい理由は?

精神障害者が就労が難しい理由

精神障害者の就労継続が難しい理由は、身体障害や知的障害と比べて、障害からくる不自由が変動するからです。

多くの精神障害の人は、ストレスに敏感で、一般の人には「そんなことで?」と思われるようなことで、大きく調子を崩してしまったり、季節の変わり目などに理由なく調子を崩してしまうことがあります。

また疲れやすく、疲れてくると逆に眠れなくなったり、精神症状が活発に出てしまうことがあります。

そして、それは、就労できるほど状態が安定した精神障害の人にも共通しています

このように、精神障害の人は、精神的な調子が波打ちやすいので、仕事に対する成果がなかなか安定しません。

精神障害者の就労には流動的なケアが必要

身体障害、知的障害ならば、わかりやすく、ある部分をケア・配慮してもらえれば、安定して成果を出すことができますが、精神障害の場合は、ある程度流動する精神の調子に合わせてケア・配慮しなくては、成果を出し続けることができません。

精神障害の人は、調子を落として、成果を出せなくなると、自信を失い、自責の念からさらに調子を崩し、企業側がまだ様子を見てくれる状況であっても、自分から辞めたいと言いだしてしまうこともあります。

精神障害者就労に大切なのは、マッチングと専門的配慮である

精神障害者就労_マッチング_専門的配慮

精神障害者就労にまず大切なのはマッチングです。

精神障害の人は、精神の調子を維持するために、充分なストレスマネジメントができる、余裕のある仕事の条件を選ばなくてはなりません

生活の為に月収が○○円必要である。

そういう切実な事情があるのはやまやまでしょうが、自分にとって余裕をもって続けられる仕事が選べないと、精神障害者の就労は、短期で破綻してしまいます。

例え、高い給料の職場に就労することができても、10日で辞めてしまっては、生活はできません。

この辺りがとても難しいのですが、精神障害者の就労は、働きだす前に、収入が少なくても生活がしていける条件を整えなくては、継続できる仕事を選ぶことができないのです。

また、精神障害者の就労継続の可能性を高めるためには、精神障害者が就労を継続するために必要な専門的配慮をある程度、理解してもらえる企業を選ぶ必要があります。

  • 精神障害者は本来の能力を継続的に出すのが難しい
  • 精神障害者はストレス、疲れに対して専門的な配慮がなければ、体調を維持するのが難しい
  • 精神障害者はどうしても休みがちになってしまう

精神障害者を雇用するには、この辺りを事前にしっかり理解する必要があります。

合理的配慮と専門的配慮

合理的配慮と専門的配慮

昨今の障害者就労には、合理的配慮という言葉が良く使われています。

合理的配慮(ごうりてきはいりょ)とは、障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜のことです。

この過度な負担になり過ぎない範囲で、というのがポイントですね。

上記の精神障害者が就労継続する可能性を高めるために必要な理解は、おそらく、企業側にとっては過度の負担と感じることでしょう。

しかし、はっきり言って、多くの人の精神障害の人の就労の継続には、専門的な配慮が必要です。

したがって、企業側が、この専門的配慮を、どうやって合理的に取り入れるかというのが課題になってくるわけです。

専門家を合理的に使うこと

そこで出てくるのが、精神障害の特徴を熟知している専門家が、企業と精神障害を持った人の間に、しっかりと入るということなのです。

企業側が専門的な配慮を頑張ろうとするのではなく、専門家を積極的に頼ろうとする姿勢が大事なのです。

就労移行支援事業所の職員や、就労支援センターの職員、そして、最近で言うと、就労定着支援の職員がいかに機能するかが大事ということになります。

重要なのは、企業側も、支援者側も、精神障害者本人も、就労の安定した継続には、専門的配慮が必要であることを理解することです。

  • 障害があっても就労できるということは、もう働いても大丈夫なぐらい安定しているってことでしょ?
  • 支援者が必要な状態では、まだ就労準備が整っていないのでは?

このような理解では、一部の本当に障害程度の軽い精神障害者しか安定して働くことはできません。

精神障害者就労によくあるミスマッチ

精神障害者就労によくあるミスマッチ

精神障害者就労に大事なのは、仕事の条件のマッチングですが、いくつかよくあるミスマッチを紹介します。

簡単すぎる仕事に能力の高い精神障害者をあててしまいがち

大きな企業にあることですが、障害のある人を雇うために、簡単な仕事を用意してくれるのはありがたいのですが、そこに、障害者就労のスーパーエリートみたいな人をあてがってしまうことがあります。

精神障害者は、調子を維持するのがとても難しく、継続的な成果を上げることは難しいのですが、短期的に出せる能力は非常に高い人もいます。

そういう人を、多くの応募者の中から選び抜いて、単純作業をあてがってしまうということが見られます。

正直、精神障害者就労は、能力の高い人に丁度良い難度の仕事を用意する方が難しいです。

結局その能力の高い人は、仕事にやりがいを感じられず、不満を感じたり、早々に調子を崩して辞めてしまうことが多いです。

履歴や、資格、調子の良いときの本人の様子で判断し、責任ある仕事をあてがいすぎる

精神障害は生まれつきに発病するのではなく、人生の途中で発病する中途障害です。

ですから、精神障害の人には、高学歴の人や、立派な職歴を持っている人もいます。

そんな人が障害者として就労してくると、きっと、障害を持っていない人と同じように働けるのでは?という期待から、責任ある役割を早々に与えてしまう企業があります。

就労のマッチングは、過去のデータではなく、あくまで今の本人の状態によって合わせなくてはなりません

本人は、与えられた責任に、最初はやりがいを感じていても、調子の揺れも関係し、徐々に大きなプレッシャーを感じるようになり、結局病気が再発してしまうと言うこともあり得ます。

そもそも精神障害の人が苦手な仕事を選んでしまう

精神障害とはあまり相性の良くない仕事があります。

  • ノルマが厳しい仕事
  • 接客業務
  • 営業など

これは一般的にもストレスが多いとされている仕事ですね。

障害者支援の基本は自立支援です。

本人の希望によって、本人の仕事を選ぶのは鉄則です。

しかし、精神障害を持った人には、自分のストレスに対する弱さに鈍い人もいます。

そういう人は、自分で、自分にあっていない仕事を選んでいることに気が付かないということがあるのです。

そのあたりは、やはり、就労移行支援事業者などの職員が、就労訓練の中で、いかに本人とやり取りをしていくかと言うことが大事になります。

おわりに、それでも精神障害者を雇わなければならないのか?

精神障害者就労継続_おわりに

精神障害者の就労継続には、専門的配慮と、マッチングが大切であるということを書いてきました。

これらは、どんなに専門家が上手に立ち回ったとしても、雇う側の企業にとっては相応の負担になってしまうでしょう。

それでも企業は、精神障害者を雇わなくてはならないのでしょうか?

その答えは、障害者就労の意義とは?という深い問題に関わってくると思います。

資本的利益追求、効率重視の視点で考えたら、企業側にとって障害者就労全般はマイナスでしかないでしょう。

そもそも障害者就労は、障害のある人にも働く権利、その機会を提供することに意義があります。

障害がある人にも差別なく、平等に働く権利や、その機会を提供する。

それは企業に生きる人間にとってマイナスのことでしょうか。

私は障害者就労には、社会的利益があると思っています。

難度が高めの、精神障害者就労を成功させることができるということは、非常に社会的利益が高いです。

ひとつひとつの企業が、それぞれにできる範囲で社会的利益をあげることは、社会全体の充実度をあげます。

そういうことの積み重ねによって、私たちの生活は、物質的にではなく、精神的に豊かになっていくのではないでしょうか。

精神障害者就労が進むと言うことは、社会全体が成熟に向かっているといって間違いないと思うのです。

綺麗ごとかもしれませんが、できれば、人間として、そんな社会作りに貢献したいじゃないですか。

黒田明彦でした。

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