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看護、介護、福祉、対人支援で使える、カール・ロジャーズから学んだ9つの心得

看護・介護・福祉・対人支援で使える心得

看護、介護、福祉などの分野の対人支援では、どのような心得で望めば、支援者、支援対象者ともどもに、心地よく過ごすことができるのでしょうか。

今回は、「看護、介護、福祉、対人支援で使える、カール・ロジャーズから学んだ9つの心得」ということで、対人支援において重要な心得を紹介します。

特に専門職でなくても、身近な人、自分の大切な人を支えるときに使える心得ですので、是非読んでみてください。

カール・ロジャーズって誰?

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_ロジャーズって誰

カール・ロジャーズは、アメリカの心理学者です。

来談者中心療法(クライエント中心療法・人間中心療法)を創始した、カウンセリングの神様と呼ばれている人です。

傾聴や共感を基本とした現代カウンセリングのベースは、このカール・ロジャーズの来談者中心療法の影響を強く受けています。

1982年には、アメリカ心理学会によるアンケートで、もっとも影響力のある10人の心理療法家で、第1位に選ばれています。

カール・ロジャーズは、それまでの心理的アプローチの専門家の診断やアドバイスによる治療行為に疑問を感じ、傾聴と共感を中心とし、クライエントに自由に語ってもらう、非指示の手法を編み出しました。

静かな革命家とも呼ばれた人です。

ちなみに、カウンセリングの対象者を、患者(patient)ではなくクライエント(来談者:client)と最初に呼んだのもカール・ロジャーズです。

カール・ロジャーズの思想の中心にあるもの

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_ロジャーズの思想

カール・ロジャーズのカウンセリングの思想の中心にあるものは、人間は皆、成長への欲求と、社会的になっていく要求を持っており、カウンセラーはクライエントがもともともっているその欲求を解放する存在であるというものです。

ありのままのリラックスした自分であり、人間的にも社会的にも成長する方向へと向かいだした人間のことをカール・ロジャーズは十分に機能する人間と呼びました。

カウンセリングの目標は、クライエントを十分に機能する人間へと導くことなのです。

カール・ロジャーズの提唱するカウンセラーの3条件

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_カウンセラーの3条件

カール・ロジャーズは、クライエントを十分に機能する人間に導くためには、カウンセラーに少なくとも下記の3つの態度条件が必要だと言っています。

  • 自己一致
  • 無条件の肯定的関心
  • 感情移入的理解

ひとつずつ、簡単に紹介しますね。

自己一致

自己一致とは、カウンセラーが自らの体験に開かれ、偽りのない態度でクライエントと向かい合っていると言うことです。

これは、カウンセラーが、クライエントに対してだけではなく、カウンセラー自身に対しても、嘘をついていないという感覚ですね。

クライエントは、そんなカウンセラーの純粋な態度を前にするときに、自分の真実をありのままに話そうと思えるのです。

これは、カウンセラーの態度の3条件の中で一番大事な条件だとされています。

無条件の肯定的関心

これは、クライエントを一人の人間として、無条件に肯定的にとらえているという態度です。

クライエントがカウンセラーの前でリラックスできるかどうかは、このカウンセラーの態度にかかっていますね。

感情移入的理解

カウンセラーがクライエントの語る言葉をあたかも自分のことのように感じながら聞くという態度です。

共感的理解とも呼ばれていますが、「私とあなたは同じ」である、と感じる同意とは違い、あくまで、カウンセラーはクライエントの感情をクライエントの感情のままに理解するというところがポイントです。

感情移入的な同意の場合は、同意できる、できないというカウンセラーの枠によって制限が出てしまいますが、感情移入的理解であれば、クライエントのどんな感情にも応じることができます。

対人支援において重要な9つの心得

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_9つの心得

これから、このカール・ロジャーズの来談者中心療法のカウンラーの態度条件をベースにしながら、対人支援において重要な心得を紹介します。

ここに書かれているものは、対象者を十分に機能する人間へと導いていくことを願った支援のための心得です。

それは、支援者が、対象者を最大限に尊重し、対象者の意思で前向きに、生きていくことを支えるための心構えです。

支援者心得①相手の現実と自分の現実は別である

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_相手と自分は別

これは、対人支援において特に大事な心得の1つです。

人間は、それぞれ別の現実を生きています。

支援の対象者が、自分とは違う現実を生きていると理解して関わることはとても大事なことです。

例えば認知症の患者さん、統合失調症の陽性症状が出ている患者さん、知的障害を持った人や、小さな子供。

それぞれが、それぞれ別の現実の世界を生きています。

対象者の言うことが、支援者の現実的感覚と違うからと言って、一生懸命に否定することは意味のないことです。

対象者の行動が、社会的に許容できない状況もあるかもしれません。

しかし、人間は全て個人の経験の世界を別々に生きていると言うことを知ることは、対象者理解には必要不可欠です。

「それがあなたの現実なのね。」

と、自他の現実をしっかり分けた上で、「私(対象者)の現実を聞いてくれる支援者」が傍にいることが、どれほど対象者の力になることでしょうか。

人間は全て個人の経験の世界を別々に生きている。

これは、ロジャーズの考え方の中心にあるもののひとつです。

是非、心得てください。

支援者心得②ひとりの人間として関わること

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_ひとりの人間として関わる

対象者の年齢、症状、状態に関係なく、ひとりの人間である私が、ひとりの人間である相手に関わるという感覚は大事なことです。

もちろん状況によっては接し方、扱う言葉は変わっていくものですが、基本的に相手をひとりの人間としてリスペクトするのは大事なことです。

症状があっても、障害があっても、子供であっても、ひとりの人間です。

相手の条件に関わらず、相手の表面的な情報にとらわれず、しっかりと、ひとりの人間として捉えていきましょう。

支援者心得③自分の動揺や感情を自分に隠さない

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_動揺や感情を隠さない

相手の前で自分を偽るのをやめてみましょう。

職員だから、支援者だから。

その立場や責任を全うすることは大事なことです。

しかし、たとえば、対象者の言動や態度に支援者の心が乱されたり、動揺することはあると思います。

また、他の嫌なことがあって、イライラしていたり、落ち込んだりしているときもありますよね。

それらの自然な感情を自分に隠すことをやめましょう。

今自分は、心が乱されている。動揺している。イライラしている。落ち込んでいる。

それは、どんなに自分に隠したところで、対象者には伝わるものがあります。

支援者が自分の感情を自分に隠してしまうと、支援者の態度と認識がズレて対象者に伝わってしまいます。

それは、対象者に対して不信感を与えます。

自分の感じたことを全て対象者に伝えろと言っているのではありません。

「今私は動揺している。」

「今私はイライラしている。」

「今私は落ち込んでいる。」

そういう、自分のありのままの動きを、自分自身に偽ってはならないということです。

自分に対してどんな感情も隠すことがなければ、対象者に純粋な姿、一致した姿を見せることができます。

まずは、支援者が自分自身を偽らないところを見せることで、自然と対象者もリラックスして、正直なところを見せてくれるようになり、支援はより深いものへと変化していくのです。

支援者心得④感情は受け止められると浄化されることを知る

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_感情を受け止め浄化する

支援者の中には、泣いたり、笑ったり、怒ったり、感情的になることは良くないことだと思っている人もいるでしょうか?

もちろん、皆の前で取り乱すことは、あまり社会的な行為ではないと判断されることも多いでしょう。

しかし、泣いたり、笑ったり、怒ったり、その感情を適切に受け止めてくれる人がいると、人間の感情は急速に浄化されていきます。

感情の浄化は、心の成長における非常に重要なプロセスです。

もし、支援者が対象者の感情を適切に受け止めることができる人だったら?

それはとてもとても素敵なことです。

どうしたら、対象者の感情を受け止めることができるのでしょうか?

感情は言葉のすがたに宿ります。

まずは、相手の言葉のすがたをそのままに受け止めてみるところから始めてみてください。

支援者心得⑤人は自分の言葉を聞いてほしがっている

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_人は聞いてほしがっている

対象者の発した言葉を大事にしましょう。

「それって、こういうことでしょ?」

「はいはい、○○ってことでいいよね。」

わかったつもりになって、対象者の言葉を支援者の言葉に安易に言い換えてしまうのではなく、対象者のそのままの言葉に寄り添いましょう。

対象者の気持ちをよりよく理解できる支援者は、対象者の言葉をそのままに聞くことができる支援者です。

人は自分の言葉を語りたがり、自分の言葉を聞いてほしがっています。

まずは、対象者の言葉をそのままに聞くこと、これが共感的支援、感情移入的理解の始まりなのです。

支援者心得⑥あくまで自立を支援する

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_あくまで自立を支援する

支援の目的はあくまで自立支援です。

対象者が自分で出来ることは、支援者がやってしまわないこと。

これは鉄則です。

たとえば、症状や障害の程度によっては、対象者はほとんど自立した行動をとれないこともあるかもしれません。

ですが、支援者の目的は、どこまでいってもどこまでいっても、対象者の自立支援なのです。

どんな状況でも、対象者の自立を支える視点をもってください。

それは、絶望的と感じる支援においても支援者のモチベーションへとつながり、希望へと変わります。

なにか1つでも、選んでもらう。

例えばそれだけでも自立支援となる状態の人もいるかもしれません。

その人が、その人らしく生きることのお手伝いができること。

それこそが支援者の喜びなのです。

支援者の心得⑦相手を理解できていると思わないこと

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_相手は理解できない

どんなに長く関わっていても、どんなに意思の疎通がとれていると感じることができていても、相手の事を理解できているとは思わないでください。

私たちは、それぞれ全く違う現実の世界を生きています。

相手を完全に理解できていると思うのは、間違いなく勘違いです。

相手を完全に理解できているということは、相手の状態が止まっている状態であると言うことです。

そんなことはありえません。

人は日に日に変化していくものです。

それこそ1秒だって同じ状態はないと言えるかもしれません。

常に変化している相手の状況を確認していく。

その心構えが毎日の適切な支援には必要なのです。

相手を理解できたと思った瞬間に、今ここの相手の適切な理解からは遠ざかると心得てください。

支援者心得⑧自分を重ねないこと

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_自分を重ねない

対象者に自分の境遇を重ねてしまうと、どんどんありのままの相手が見えなくなってしまいます。

自分に似ていると感じる対象者の対応こそ気を付けてください。

本当に相手のことが見えていたとしたら、似ているなんてことは思えません。

逆に言えば、自分とは似ても似つかないと思えるようになってこそ、相手の事が見えてきていると思ってください。

自分の過去の経験を相手にかぶせてしまうことと、感情移入的に相手を理解することは全く別です。

対象者に自分を重ねすぎてしまうと、どんどん視野が狭くなってしまい、対象者のことも、周りの事もどんどん見えなくなってしまいます。

結果的に対象者の自立を適切に支援することが難しくなってしまいます。

どの対象者にも適切な支援が維持できるよう、自分と境遇が重なってしまうような対象者がいる場合は注意してください。

支援者心得⑨相手の成長を信じること

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_相手の成長を感じる

支援者は、対象者がどんな状況にあっても、成長したがっている、成長に向かっているということを信じましょう。

どんなに状態が悪くても、どんなに社会性が低く、適応が悪くても。

この人間は、この人間の身体は、この人間の心は、成長したがっている、成長に向かっている。

それを支援するのが自分の役割だと信じましょう。

それを信じることは、対象者のためだけではありません。

対象者の成長を望む、人間としての方向性を信じることができれば、支援者が自分の役割を全うするための活力が生まれるのです。

支援者にとっては、対象者の成長を信じる心こそ、希望なのです。

カール・ロジャーズから学んだ対人支援の9つの心得、おわりに

対人支援で使えるカール・ロジャーズの心得_おわりに

「看護、介護、福祉、対人支援で使える、カール・ロジャーズから学んだ9つの心構え」ということで書いてきました。

いろいろ書きましたが、大事なのは自分を偽らずに、真っ直ぐに相手の自立、成長への方向性を望み、信じるということが大事、ということです。

しかし、これを真っ直ぐ望み、信じるためには、支援者自身が自立、成長への渇望に開かれている必要があるのです。

この辺りが、カール・ロジャーズの来談者中心療法の奥深いところですね。

支援者自身が、十分に機能する人間になることを目指し続けることが大事ということです。

あなたの成長への渇望が、どんどんあなた自身に明らかになり、人生が、ワクワクするものになりますように。

黒田明彦

黒田明彦の電話で積極的傾聴60分3000円

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