エンカウンターグループという言葉がご存知でしょうか?
それは、4人~15人の人が集まって行うグループワークの1つです。
現代ではとてもマイナーな取り組みになっていますが、実は人間が心の底で求めているような深い交流ができる素晴らしいグループワークです。
今回は、そんなエンカウンターグループの中の非構成的エンカウンターグループについて書いてみたいと思います。
日常では、なかなかふれていくことのできない、ありのままの自分になっていくための取り組み。
興味のある方は読んでみてください。
非構成的エンカウンターグループってなに?

エンカウンターグループとは、簡単に言えば、4~15人ぐらいの人が集まって行う、語り合い、聞き合いの場であり、深い人間交流が願われている場です。
現在、エンカウンターグループは構成的なものと、非構成的なものの2種類が行われています。

構成的エンカウンターとは?
主催者側が事前に語り合いのテーマや、ウォーミングアップ、フィードバックなどの進行の構成を決め、効率的に深い人間交流を行おうとするグループです。
短い時間での効果と、初心者でもファシリテートが可能な安全性が期待されますね。

非構成的エンカウンターとは?
主催者側は、場所と時間と最低限のルールだけを決めて、語り合いの内容は、その時その時の参加者に任されます。
日常は仮面の下に隠れがちな偽りのない自己表明、深い感情体験の言語化が願われています。
積極的傾聴の神様・カール・ロジャーズが創始したものであり、ベーシックエンカウンターグループとも呼ばれていますね。

扱いやすさから言って、現代人には非構成的なエンカウンターグループよりも、構成的なエンカウンターグループの方が好まれているかもしれませんね。
非構成的エンカウンターグループの歴史は?

エンカウンターグループなど、感受性訓練の歴史を簡単に列挙してみましょう。
- クルト・レヴィンを中心としたグループ・ダイナミックス(集団力学)の研究者たちが, 1940年代にTグループ(感受性訓練)をやり始める。
- カール・ロジャーズが1942年に来談者中心療法の本を初めて出版。
- カール・ロジャーズが1950年頃にカウンセラーの訓練をグループ形式で進めるようになる。
- カール・ロジャーズは、来談者中心療法のグループにもTグループ的考えをとり入れ,従来のクライエントのみを対象としたものから、一般正常人の成長を促進するグループへと、対象を拡大。
- 1962年頃にはすでにエンカウンターグループという名称はグループ内で使われていたよう。
- Tグループとエンカウンターグループは、お互いに改良が重ねられていく中で、どんどん差がなくなっていったが、Tグループの方は、諜題解決を志向したグループや、場面構成の多いグループ運営が行なわれることが多かった。

- 日本では、1949年にイリノイ大学のW・L・Leedzを招いて行われた九州大学のワークショップが感受性訓練の始まりだと言われている。
- 1955年、友田不二男によって、日本初のカウンセリング・ワークショップが開かれる。これは、カール・ロジャーズのアプローチ(来談者中心療法)を個人ではなく、集団に対して適用したものであり、日本における非構成的エンカウンターグループのさきがけとなっている。

- 1970年代半ばに國分康孝が構成的エンカウンターグループを紹介する。
非構成的エンカウンターグループってどう進行するの?

非構成的エンカウンターグループの進行について、簡単に説明します。
非構成的エンカウンターグループは、ファシリテーターが簡単に挨拶をして、スケジュールの確認をした後、開始の宣言をします。

その後は、ファシリテーターからの指示・指導は一切ありません。
非構成的エンカウンターグループの進行は参加者に任されています。
- 沈黙
- 誰かが語り
- 誰かが受け止め
- 場が受け止め
- 沈黙
- また誰かが語る
慣れている人たちのグループですと、始まった途端に誰かが語りたいこと、聞いてほしいことを声にすることもあります。
初心者ばかりのグループですと、ポカンとした沈黙の時間が、30分から1時間続くこともあります。
初心者非構成的エンカウンターグループbefore

初心者非構成的エンカウンターグループafter

非構成的エンカウンターグループの魅力は?

語るも自由、聞くも自由。
誰かの言う通りにしなくて良い場。
そんな場では、ゆっくりと自分というものに向き合うことができる贅沢な時間になります。
沈黙の中、自分軸で動くしかないという状況の中、少しずつ、普段自分を脅かしている権威や、せわしない役割から解放されていることに気がついていきます。

そこにあるのは、純粋な「私」という感覚だけ。
そんな場で語り合える、聞き合える。
そこで生まれる高揚感や一体感は、なかなか他では味わえません。
これが、非構成的エンカウンターグループの魅力です。
多くの人に、一度は体験してみてほしいですね。
非構成的エンカウンターグループの必要性は?

なんだか、自分で自分がよくわからない。
誰にもわかってもらえない。
誰にも私の気持ちは伝わらない。
そんな嘆きを誰しも抱えたことがあるのではないでしょうか。
非構成的エンカウンターグループは、自分自身になっていく場。
飾る必要も、隠す必要もなく、自分を語ることができる。
それは、自分自身になっていく歩みのようなものです。
普段、自分という存在がどこか疎遠になってしまうのは、自分として歩かせてもらえる場が極端に少ないからではないでしょうか。

自分という感覚は、語り、自分のところを言葉にし、声にすることで少しずつはっきりしていくのです。
そして、ただ、自分になっていくための場は、誰かにわかってもらえる自分になっていく場でもあるのです。
それは、人間が愛されるため、そして、愛するためにどうしても必要なプロセスなのかもしれません。
日常いたるところでそんな場が開かれることが当たり前になる日々が来るまで、そして、愛に苦しむ人がいなくなるまで、非構成的エンカウンターグループという特別な場はどうしても必要なのです。
非構成的エンカウンターグループ・おわりに

非構成的エンカウンターグループについてここまで書いてきました。
現代日本では、非構成的エンカウンターグループは活発に行われているとは言えません。
しかし、便利な世の中になり、情報が誰でも簡単に手に入るようになり、均一化された今、やっと多くの人が、自分自身の深い心の交流を求めることができるようになってきているのではないでしょうか。
非構成的エンカウンターグループは、人間が最も求めている深い交流の1つの在り方です。
まだまだ、これから、多くの人にこの交流を体験していただければ、と願っております。
ずっと一緒にいるのに、なかなかさわれない自分自身。
ちょっと、もっと、ふれてみたい。
そう思いませんか。
黒田明彦