エンカウンターグループという感受性訓練の場を皆さんはご存知でしょうか?
積極的傾聴の神様、カール・ロジャーズが晩年に非常に力を入れていた取り組みですね。
現在ではなかなかお目にかかることが少ないエンカウンターグループですが、人間の感受性、感性を育てる非常に効果的なグループです。
エンカウンターとは、出会い、遭遇という意味です。
だれかの深い語りに出会い、自分の深みが引っ張り出される。
他の誰かとの真実の出会いの場であり、自分自身との真実の出会いの場です。
興味のある方は読んでみてください。
エンカウンターグループ(感受性訓練)って?

エンカウンターグループ(感受性訓練)は、7名~15名程度のメンバーとファシリテーター1~2名(主に世話人と呼ばれる)で構成されるグループワークです。
リラックスして、普段以上に感情を表現できるように、保養地など日常生活の場から離れた場所を使用することが多いです。
本来エンカウンターグループ(感受性訓練)は、集中的なグループトレーニングで、1日10時間近くのワークを歴史的には3週間、1週間と長期にわたって行われてきた訓練ですが、参加者の経済的な事情や、時間的な事情により、徐々にその期間は縮小されてきました。
現在では長いものでも3泊4日というところでしょうか。

語り合い、聞き合いのグループですが、共通の話し合いテーマなどをもたず、場の進行は、その時、その時の参加者の個人的な心と身体の動きにゆだねられています。
エンカウンター(深い出会い)が願われているこのグループでは、率直な自己表明と、普段はなかなか言葉にする機会のない、自分の深い感情体験を声にしていきやすいように構成されています。
頭(論理)だけのやりとりに終わったり、心を開く必要が全くないような日常の中、高速で行われている情報交換とは一味も二味も違った、身体に響く人間交流が願われている場です。
感受性はどういう仕組みで訓練されるの?

エンカウンターグループは感受性訓練の場であり、感性の訓練の場でもあるグループです。
エンカウンターグループ(感受性訓練)は、歴史的には長期間の集中的なグループワークであり、場面構成の行われない、非構成的なグループワークです。
このような状況で語り合い、聞き合いの場がもたれると、徐々にでてくる参加者の感情的、情緒的な語りが、触発を生み、次第にグループ全体の感受性は高まっていきます。
徐々に普段のように、仮面の下に素顔を隠している余裕もなくなり、ありのままの感情と情緒が飛び出してきます。

そして、それらの活き活きとした感情、情緒がグループによってことごとく受容されていくのです。
エンカウンターグループ(感受性訓練)の期間の後半は、普段とは違う、身体の奥底から溢れてくるようなエネルギーに包まれている実感を得られることでしょう。
エンカウンターグループ(感受性訓練)が終わったあとは?
一度高まった感受性は、エンカウンターグループ(感受性訓練)が終わり、日常に戻ると急速に落ち着いてしまいます。
エンカウンターグループ(感受性訓練)による感受性・感性の推移

しかし、落ち着いたあとも、エンカウンターグループ(感受性訓練)に参加する前よりも、感受性と感性の基本値が上がっているイメージです。
この効果は数年単位で持続することもあります。
そして、次にエンカウンターグループ(感受性訓練)に参加するときは、以前参加したときよりも短い時間で、感情、情緒の高まりを実感することができるでしょう。
このように、エンカウンターグループ(感受性訓練)の参加を繰り返していくと、徐々に感受性・感性の基本値が高まり続け、徐々にエンカウンターグループ(感受性訓練)内と普段の日常の感受性・感性の差が縮まっていくわけです。
短期間のエンカウンターグループは、感受性訓練になるの?

現在は、1日のみ、しかも2時間~3時間のエンカウンターグループ(感受性訓練)が開催される場が多いです。
上記のように、長期間の集中的なワークであるからこそ、感受性・感性が高まりやすいというのがエンカウンターグループ(感受性訓練)のミソですが、短期間のエンカウンターグループ(感受性訓練)では効果が望めないでしょうか?
結論から言えば、基本的には難しいです。
しかし、ある条件が整えば、短時間のエンカウンターグループ(感受性訓練)でもある程度の効果が見込めます。
短期間のエンカウンターグループ(感受性訓練)でも効果が上がる条件
①グループの構成員がすでに、感受性訓練に慣れた人のみで構成されていること
3泊4日のスケールのエンカウンターグループに複数回、少なくとも1回は参加したことのある人だけで構成されているグループであれば、短い時間でも感受性の高まりを体験することはできるでしょう。

しかし、そこに初めての人が入った場合、その初めての人の感受性の高まりを期待するのは難しいと思います。
②グループの中に訓練された聞き手がいること
感受性の高まり、感性の深まりが起こるかどうかは、その場その場で、どれだけ深い語りが生まれたかによります。
訓練された聞き手は、非常に短い時間で、この深い語りに語り手を誘うことができます。
ひとたび深い語りが生まれれば、そこから触発効果が生まれ、短時間でグループの感受性がグッと上がる可能性も高まります。

③グループの中に鋭い感性の人がいること
普段から鋭い感性を持っている人は、一呼吸の語りで、グループの感受性を高め、深い感性の世界へ誘うこともあります。

ただ、訓練された聞き手のいない状況での、急激な感受性の高まりや、感性の深まりは、グループ参加者の拒否反応、抵抗を生んでしまうこともあるので、グループが基本的に受容的な雰囲気を持っているかどうかは重要になってきます。
以上、3つの条件が、1つ以上ある場合は、短時間のエンカウンターグループでも感受性の高まりや、感性の深みに出会う可能性は上がります。
特に②の訓練された聞き手がいるかどうかは、大事なポイントですね。
エンカウンターグループという感受性訓練・おわりに

「エンカウンターグループという感受性訓練」ということで、紹介してきました。
エンカウンターグループ(感受性訓練)経験者としては、是非、3泊4日スケールで、どっぷりとエンカウンターグループ(感受性訓練)を体験していただきたいという気持ちはありますが、なかなか時間的にも経済的にも厳しいと感じる人が多いのが現状ではないでしょうか。
ここに書いてあることを頭だけで理解することと、実際に体験することでは、天と地ほどの差があります。
目が覚めてしまうような、本物の人間交流。
それは、現代でも間違いなく体験することは可能です。
ちょっと参加したいな、と思いませんでしたか?
黒田明彦