今回は自己理解を深める方法の1つとして、エンカウンターグループを紹介します。
私は、自己理解を深めるのに非常に効果の高い取り組みとして、積極的傾聴とエンカウンターグループを挙げていますが、1対1の積極的傾聴よりも、エンカウンターグループの方が自己理解を深める効果がさらに高いと思っています。
さて、さて、なぜエンカウンターグループは自己理解を深める効果が高いのでしょうか?
是非読んでみてください。
エンカウンターグループの前に、まず自己理解ってなに?

自己理解を深めることができるという、エンカウンターグループの説明の前に、そもそも自己理解とはなんなのでしょうか?
それは、読んで字のごとく、自分で自分を理解するということです。
自分の理解は、2つに分かれます。
ひとつは、自分の感情、思い、体感をありのままに表明できるかどうかということ。
これを私は主観的自己理解と言います。
ありのままの自分、ワンネスの自分の感覚表明ですね。
もうひとつは、自分を自分で客観的に理解するような自己理解。
自分で自分を対象化し、自分で自分の能力を数値化してみたり、評価することができるような自己理解ですね。
自分を客観的に捉えて理解することで、組織・集団の中でわきまえながら、丁度良く活動することができます。
自己理解は、この主観的自己理解と、客観的自己理解を分けて考えた上で深めることができると、社会の中で丁度良く、元気に活動できる人間になれます。
エンカウンターグループってなに?

エンカウンターグループはカール・ロジャーズが考案した感受性訓練のグループワークです。
現在では非構成型と構成型のエンカウンターグループがあると言われています。
この記事で紹介しているエンカウンターグループは、非構成型のエンカウンターグループです。
ロジャーズが晩年最も力を入れていたのが、この非構成型のエンカウンターグループです。
ロジャーズはエンカウンターグループによって、世界の様々な問題を解決できると信じていました。
エンカウンターグループの効果って?

エンカウンターグループは、徹底した非指示のグループであり、普段ではなかなか体験できないほどの自由と、受容性を体感することができます。
エンカウンターグループでは、参加者の自由な発言により、それぞれ感情や、エネルギーを触発され、感受性が高まります。
普段は自分の感情や、価値観を抑え気味の人でも、グループの影響力により、感受性が高まり、活き活きとしたありのままの自分が抑えきれなくなり、表出できてしまいます。
そして、表出された感情やエネルギーが、ことごとくグループによって受容されていきます。
それによって、心の癒しや、新たな自分の瑞々しい気づきが生まれ、どんどん参加者は本来の元気を取り戻していくのです。
エンカウンターグループではなぜ自己理解を深めることができるのか?

エンカウンターグループでは、主に主観的自己理解を深めることができます。
参加者の多くは最初、グループの中で、客観的に自分をとらえ、自分がグループの人にどう思われるかを心配するあまり、自由に振舞うことはできません。
しかし、徐々にグループが成長し、参加者同士の信頼関係ができてくると、客観的な自己理解から離れ、主観的な自己感覚にどっぷりとつかるような、深い自分語りができるようになります。
その語りは、他の参加者の深い自分語りを触発し、グループ内には深い自分語りをする人と、それを精一杯受け止めようとする人との交流が沢山生まれます。
感受性の高まりと、受容的な雰囲気、そして、どこまでも深く主観的な自己感覚の表明が許される場。
エンカウンターグループでの深い人間交流は、主観的自己理解を効果的に高めることができるのです。
1対1の積極的傾聴よりも、エンカウンターグループの方が効果が高い

効果的に自己理解を深めるには、積極的傾聴を受けることと、エンカウンターグループに参加することが良いと私は理解していますが、1対1の積極的傾聴よりも、エンカウンターグループの方が、自己理解は深まりやすいと考えています。
それは、1対1よりも、多くの人の前で主観的自己感覚を表出したほうが、もらえるフィードバックが大きいからです。
多くの人の前で、主観的自己感覚をさらけだすことには抵抗があると、考える人もいるかもしれません。
しかし、エンカウンターグループの触発力はなかなかのものです。
エンカウンターグループに参加していると、主観的自己感覚を抑えておく方が難しくなります。
エンカウンターグループの中で、抑えきれず、飛び出してしまった主観的な自己感覚が、多くの人に問題なく受容されていくという体験は、その後、他の場所でも無理なくありのままに主観的自己感覚を表出することへの自信へとつながります。
「私はありのままに感じたものを表出しても大丈夫なんだ。」
そんな感覚を身体全体で、溢れんばかりに感じることができるからです。
このありのままの自分の感覚が受容されるという感覚は、どんなに優れた傾聴者と1対1のときに感じたときよりも、複数の人間、グループによって感じたときの方が影響が大きいのです。
主観的自己理解が深まると、客観的自己理解の妥当性もあがる

エンカウンターグループへの参加すると、自分自身の主観的感覚に自信がもてるようになるり、自分の感覚を疑う必要がなくなります。
そうすると、今度は、自分を客観的に捉えるときも、以前よりもしっかりと、無理なく自分を評価したり、数値化することができるようになります。
組織・集団の中の自分の立ち位置や、役割を見極めるのも上手になり、社会の中でうまく機能できる人間になっていきます。
自分の主観的感覚がはっきりしているので、他人からの不当な客観的評価にもうろたえることなく、冷静に受け止めることができるようになります。
主観的自己理解が深まっている人は、客観的自己理解も余裕をもって深めることができるようになるのです。
エンカウンターグループは自己理解を深める、おわりに

「自己理解を深める取り組み・エンカウンターグループ」ということで書いてきました。
- エンカウンターグループは、自由で受容的雰囲気に溢れたグループである。
- そこでは、徐々に主観的自己感覚を抑えきれなくなり、しっかりと表出することができる。
- 思わず表出してしまった、主観的自己感覚が、グループの参加者にしっかりと受容されていく。
- 主観的自己感覚を表出することは、危険なことではないと実感できる。
- 主観的自己感覚に自信がもてるようになり、他の場でも自然に表出できるようになる。
- そして、主観的自己理解を深めることができれば、客観的自己理解も落ち着いて、深めることができるようになる。
以上のことがよくわかりましたね。
現在では、なかなかエンカウンターグループを開催している場所はありませんが、もし機会があれば、是非参加してみてください。
きっと、ステキな初体験があなたを待っていますよ。
黒田明彦