この記事は、カール・ロジャーズのパーソナリティ理論をなんとかわかりやすく説明できないかと考え、できるだけ簡単な言葉で説明しようとして作成した全15話にわたる小説タッチの記事です。
カウンセリング、カール・ロジャーズ、パーソナリティ理論、来談者中心の積極的傾聴、人間理解に興味のある方は読んでみてください。
この記事は序章です。
第1話 いつものようにウロウロした日
小さな森の小さな空き地に静かにたたずむ、小さな建物。
屋根は赤く、壁は白い。
窓にはカーテンがかけられ、中の様子はわからない。
ドアノブには小さな看板が掛けられている。
看板には“カウンセリング”と手書きで書かれている。
その他には何の情報もない建物。
森の動物たちの多くは近くを通るたびに気にかけてはいるものの、誰もそのドアをノックしなかった。
「誰が住んでいるのかしら?」
「誰か知らないの?」
「なんだか不気味ね・・・。」
「カウンセリングって何?」
今日も動物たちのささやく声だけが聞こえていた。
その建物の周りを一羽の小さなウサギがウロウロしている。
ちょっと遠巻きに建物の周りをグルグル、グルグル回っている。
小さなウサギは大きくため息をついてうなだれる。
忍び足でそろっと窓に近づく小さなウサギ。
窓には厚手のカーテンが掛かっていて、いくらのぞき込んでも部屋の中の様子は見えなかった。
大きくため息をついてばかりの小さなウサギは、今日もトボトボと自分の家へと帰っていった。
第2話 ノックをして、ドアが開いた日
次の日も、あの小さなウサギは、その小さな建物の近くをウロウロしていた。
今日はドアノブにかけられている、小さな手書きの看板に小さな紙が貼りつけられている。
小さなウサギが近づいてその紙を見てみると、“御用のある方はノックをしてください”と手書きで書かれていた。
小さなウサギは勇気をだして、その赤いドアをノックしてみることにした。
トントン
返事がない。
小さなウサギがもう一度ノックをしようとすると、ガチャッ!と赤いドアが開く。
小さなウサギを出迎えてくれたのは、年老いたウサギだった。
小さなウサギはおもむろにカバンから一冊の本を取り出して、年老いたウサギに見せる。
古びた本には、かすれた文字でカウンセリングと書かれている。
小さなウサギさんは急に張り詰めた顔になって、大きな声で質問した。
目を丸くして、しばらく黙っていた年老いたウサギは優しく笑う。
力強く、うなづくクー。
クーは困ったように下を向いてしまう。
年老いたウサギは少しだけ考えてから、クーに応える。
パッとクーの顔が明るくなる。
クーは、ササッとカバンに本をしまって、ペコッとお辞儀をしたあと、その小さな建物を出ていった。
ドアの前で小さなウサギを見送っていた年老いたウサギはポツリとつぶやいたあと、ゆっくりと建物の中に戻っていった。
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