この記事では、カール・ロジャーズのパーソナリティ理論に出てくる命題18、19についての説明に挑戦しています。
命題18のポイントは、人間は、ありのままの体感を自分のものとして認識できているとき、他人のことをよりよく理解し、認めることができるということ。
命題19のポイントは、人間は、ありのままの体感に開かれていくとき、それまでに身につけた、他人の評価に基づいた価値観を脱ぎ捨て、自分の身体の感覚を根拠に価値観をつくりなおしていくということ。
カール・ロジャーズのパーソナリティ理論をなんとかわかりやすく説明できないかと考え、できるだけ簡単な言葉で説明しようとして作成した全15話にわたる小説タッチの記事です。
カウンセリング、カール・ロジャーズ、パーソナリティ理論、来談者中心の積極的傾聴、人間理解に興味のある方は読んでみてください。
第15話、最終日の学習~命題18、19~
小さな建物の中、テーブルをはさんで向かい合って椅子に座る二羽のウサギ。
命題18
個人が、自分の感官的・内臓的経験の一切を知覚し、それを首尾一貫した統合されている一つの体系へと受容するならば、そのときには、その個人は、必然的に他のひとびとをよりいっそう理解しており、かつ、他のひとびとをそれぞれ独立した個人としてよりいっそう受容しているのである。
(命題はロージァズ全集8巻パーソナリティ理論、第2部、第4章より引用)
私が、自分のありのままの体感を認識し、それらを私という感覚に自由に取り入れることができているとき、そのとき私は、他の人々をよりいっそう理解できる。
そして、他の人々を自分とは違う、ひとりひとりの独立した個人として、認めることができる。
大分手になじんだ大きめの湯飲みでお茶をすするクー。
暖かいお茶が、クーをホッとした気持ちにさせる。
老ウサギも穏やかにお茶をすすっている。
老ウサギは、静かにお茶をすすりながら、目を細める。
クーは、急に胸が苦しくなるほど重く悲しい気持ちになった。
少しの静寂の後、老ウサギはぽつぽつと語りだす。
クーには、老ウサギの目に光るものが見えた。
命題19
個人は、自分の有機的経験をますます多く自分の自己構造へと知覚し受容するにつれて、自分が、歪曲して象徴されていた自分の内面への投影にきわめておおきく基礎づけられた現在の価値体系を、つぎつぎと起こっている有機的な価値づけの過程と置き換えていることに気づくのである。
(命題はロージァズ全集8巻パーソナリティ理論、第2部、第4章より引用)
私は、自分の身体の体感を、ますますありのままに自分の一部として認識できるようになるにつれて、
他人の評価によって生まれた価値観を、つぎつぎと身体の感じから得られる価値観へと置き換えていることに気づく。
身体の語る言葉が、私に見えなくなってしまった身体の経験を静かに、明るく照らし出してくれる。
急に立ち上がって大きな声を出すクー。
力強く語る小さなウサギは、まっすぐ老ウサギの目を見つめている。
老ウサギが何かを言いかけたその時、
バタン!!
?「あらあらあら」
?「わわわわ」
?「どわわー」
?「いたい、いたい、どいて!」
小さな建物のドアがバタンと開き、ドアの外で聞き耳を立てていたであろう森の動物たちが、ドタドタと折り重なって、小さな建物の中に倒れこんだ。
びっくりして飛びのくクー。
ボソッとつぶやく老ウサギ。
?「あの・・・私もかうんせりんぐ、できるでしょうか?」
?「わたしも・・・。」
?「わたしも!」
?「あの・・・僕も…。」
口々にものを言う森の動物たち。
静かに、とても優しい声で老ウサギは応える。
?「よかった。」
?「ありがとうございます!」
?「やった!」
?「ありがとう!」
森の動物たちは、目をキラキラさせながら喜んだ。
後日、準備ができたらまたドアに張り紙をしておくから、今度はちゃんと、ひとりずつドアを開けて入ってきなさい。
?「わかりました。ありがとう!」
森の動物たちはそれぞれ老ウサギにお礼を言って、森へと帰っていった。
老ウサギは部屋の奥でお茶を入れて持ってきてくれる。
ふーふーとお茶を冷ましながら、静かにお茶をすする二羽のウサギ。しばしの間、ゆっくりと時間が流れた。
いつものようにパタパタと後片付けを始める小さなウサギさん。
スッとクーに向けて手を伸ばす老ウサギ。
クーが、小さな手を伸ばすと、老ウサギはびっくりするほど力強くクーの手を握った。
クーは、ペコッと頭を下げて、足早に小さな建物をあとにしていった。
書斎に移動し、机においてある写真を静かに見つめている老ウサギ。
一瞬、まっすぐ老ウサギを見つめるクーの目の力強さを思い出す。
老ウサギは、涙をいっぱいにためながら、少し笑った。
老ウサギは、ポツリとつぶやき、写真たてを机に伏せることなく、そのまま机にかざった。
不思議な達成感にあふれるクーは、タカタカと走って家路を急いでいた。
バタン、ゴロゴロゴロ。
この前とまったく同じ石につまづき、倒れ、すごい勢いで転がっていくクー。
クーがふと見上げると、そこにはあの大きな木。
ヒューッ
その時、クーがいつかどこかで出会った風と同じ匂いがした。
?「うふふふ。」
クーの脳裏に一瞬だけ、小さな笑い声がよぎる。
ニッコリと笑った後、むくりと立ち上がり、またタカタカと家路を急ぐクー。
風のように走り抜ける小さなウサギは、なんだか今日、とても良い夢が見られるような気がしていた。
夢うつつ

ーfinー